2008年8月4日月曜日

ソフトウェア企業の社会的責務

Notes/Dominoユーザーが立つ岐路 - 企業のコラボレーション基盤を考える

この記事の趣旨とは違うが、読んでいてふとソフトウェア企業、いわゆるソフトウェアベンダの社会的責務について考えた。

ソフトウェアの世界は非常に進歩が激しい為、短くて1年、長くて3年といったサイクルで新しいバージョンが提供されていく。しかし、それによって当然「旧バージョン」が作り出され、それらはいずれベンダからサポートされなくなっていく。

最近のニュースとしては、Windows XPのサポート終了に関する話題が最も身近だろうか。

こういった状況では、「現行バージョン」の顧客をいかに「新バージョン」に移行させるか、ということが課題となる。ベンダにとっては、「新バージョン」を「有償で購入してもらう事による売」という側面と、「旧バージョン」の「サポートを続けるコストの削減(もしくは撤廃)」という側面の両面で、この移行作業は重要だ。

しかし、全くもって明白なのは、これらのどちらもがベンダにとってのメリットであり、顧客にとってのメリットではない、というところだ。

さて、そんな顧客にとってメリットの無い選択肢を顧客に受け入れてもらう為に、ベンダが自らの行為を正当化する武器は何かと言うと、「新バージョン」における「機能強化」、「機能追加」、「性能強化」、等々のお題目である。

それらのお題目が仮に真実だったとしても、ここには一つの可能性が残る。つまり、顧客はそれらお題目のどれも必要としていない可能性、である。

この場合、顧客には二つの選択肢がある。一つには、ベンダの言うことを聞いて嫌々ながら「新バージョン」に移行するか、もしくはベンダの言うことから顔を背けて「旧バージョン」を使い続けるか(そしてベンダからのサポートをいずれ失うか)、だ。

上記のLotus Notesの記事は、まさにこの状況について書いていた物だ。

さて、私はどちらかというとソフトウェアを作る側の人間であるので、立場としてはベンダに近いわけなのだが、この様な現状にとても違和感を覚える。何と言うか、サポートの終了を人質に新バージョンを顧客に押し売りしている」気がしてしまうのだ。

ソフトウェアベンダは、こんな事をしていて良いのだろうか。

勿論、ビジネスでソフトウェアを開発し販売している以上、ビジネスにならない事は出来ない。しかし、今までの「常に新バージョンを作り続け、それを売る」というビジネスと「(顧客が望む場合は)旧バージョンのサポートも続ける」という行為は、果たして両立出来ない物なのだろうか。仮に旧バージョンのサポートを続ける事がビジネスベースでは難しいのであれば、オープンソースソフトウェア開発というモデルを利用してそれを行う事は出来ないのであろうか。

社名は失念してしまったが、新バージョンを商用ソフトとして販売し、旧バージョンはオープンソースにして公開する、というやり方を行っていたソフトウェアベンダの話を聞いた事がある気がする。しかし、
残念ながら未だにそれを行っている会社が増えているとは耳にしない。

何と言うか、個人的には傲慢にも思えてしまうこのベンダの姿勢は、今後変えていかなければならないものである様に思える。そうしないと、業界全体が何か大きなしっぺ返しを喰うことになってしまう様な、そんな気にさえなるのだ。

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